食品のラベルでよく見かける『製造者』や『製造所』といった表示。
一文字違いだけど、『製造者』や『製造所』って何が違うの?と疑問に持つ方も多いと思います。
こんにちは。
食品業界の開発職としての経験は10年以上、現役開発職の、ヒゴです。
この記事では、『製造者』や『製造所』に関する表示について解説していきます。
食品の表示を正しく理解することは、食品を選択する上で重要なことなので、しっかりと勉強していきましょう!
・「製造者」と「製造所」の違いとそれぞれの意味
・「製造者」と「製造所」表示に関するルール
「製造者」と「製造所」の違い
(1)ラベルやパッケージに記載されている表示の責任者:個人や会社を指します
(2)食の安全性の観点から食品を製造した場所:会社を指します
例えば、それぞれの責任の所在が下記のような場合を考えてみましょう!
A社は、ポテトチップスを製造しているお菓子メーカーで、(ⅰ)自社商品や(ⅱ)他社から製造委託された商品の製造も行っています。
(ⅰ) | (ⅱ) | |
---|---|---|
ラベル表示責任 | A社 | B社 |
食品の製造責任 | A社 | A社 |
(ⅰ)自社商品の場合、A社はポテトチップスの製造から包装までを実施し、ラベルの表示内容まで責任を持っている状態です。
このとき、A社は「製造者(ラベルの表示責任者)」であり「製造所(食品の製造場所)」でもあります。
(ⅱ)他社から製造委託された場合、A社はポテトチップスの製造から包装までを実施しますが、ラベルの表示内容はB社が責任を持っている状態です。
このとき、A社は「製造所(食品の製造場所)」となります。
食品の製造会社がラベル表示に責任を持っていると「製造者」、ただ単に食品を製造した責任だけの場合「製造所」となるのか。
つまり「製造者」と「製造所」の違いは、その会社の責任の所在がラベル表示なのか、食品の品質(中身)なのかの違いってことだね。
文章だけだと内容が難しいと思いますので、次に具体例を出しながら、「製造者」や「製造所」の表示ルールについて詳しく説明していきます。
「製造者」や「製造所」の記載に関するルール
ラベルの表示責任とは?
次の例の場合、ラベルの表示責任者は「株式会社 合食 函館第一工場」で、所定の位置(赤の□で囲んだ部分)に記載する必要があります。
ラベルの表示内容とは、パッケージに記載されているすべての情報のことを言います。
具体的には、青で示している部分などで、アレルギー物質や賞味期限、内容量(20g)、栄養成分値が関連する法規に合致していることについて、ラベルの表示責任者「株式会社 合食 函館第一工場」が責任を持っているということになります。
裏面の表示だけじゃなくて、表面の表示についてもラベルの表示責任者は間違っていないことに責任を保つ必要があるんだね。
お客様相談室の電話番号も「㈱合食」になっていることからも、この商品のラベル表示責任があることが分かるわ!
またラベル表示責任者は、下記の4つの記載方法があります。
すべて「~者」とされていることから、会社名や個人名を明確にしなければいけないというルールになっています。
製造者:製造業者が責任を保つ場合
加工者:加工業者が責任を保つ場合
輸入者:輸入業者が責任を保つ場合
食品の製造場所とは?
食品の製造場所は「製造所」と「加工所」の2つに分けられます。
「~所」が場所を示しているのは分かるけど、「製造」と「加工」って具体的になにが違うのかな?
製造と加工の違いは次のように定義されています。
加工:あるものを材料として、その本質は保持させつつ、新しい属性を付加すること
これだけの説明だと、違いが分かりにくいわ。
それでは、具体的にどのような作業が「加工」に当たるのかまとめた資料を載せておきます。
下記に該当しない場合は、「製造」となります。
カットして小分けをしたり、冷解凍のように食品そのものに大きな変化がない場合は、「加工」ということだね。
なるほど!具体的な例があると分かりやすいわ。
でも食品を作るのに「製造」と「加工」の両方を行う場合はどっちを記載すればいいのかな?
食品の製造場所は「最終的に衛生状態を変化させる製造または加工を行った場所」を記載しなければいけません。
衛生状態の変化とは、食品を包装する工程がイメージしやすいと思います。
スライスされたハムも包装容器の中に入ってしまえば、衛生状態は変化しないとみなされます。
つまりお店に並んでいるような包装をした場所が加工所か製造所かによって、どちらを記載するかが決まります。
包装容器に入れた場所がパッケージの裏面に記載されていると覚えておけばいいわね。
表示と製造が同じ場合
あれ、さっき確認した子持ちししゃもの例だけど、表示責任者は「製造者」を見れば分かるけど、製造場所の表示がされてないな。
ホントね。これって違反なのかしら?
上記のパッケージではラベル表示責任者は「製造者=株式会社 合食」となっていますが、製造場所の記載はありません。
繰り返しになりますが、原則、ラベルの表示責任者と製造場所(食品の製造場所)の両方を記載する必要があります。
ただし早わかり食品表示ガイド 令和5年3月版(消費者庁)によると、「表示内容に責任を有する者の氏名または名称及び住所と同一である場合には省略可能」とされています。
つまり、ラベル表示責任者と食品の製造場所が同一の場合(繰り返しの表示になる場合)、ラベルの表示責任者のみの記載で問題ないということです。
繰り返しになる場合は、簡略化できるってことだね!納得したよ。
具体的な表示例については、食品衛生の窓 一般用加工食品|東京都福祉保健局に載っていますので、表示方法が気になる方は参考にしてください。
まとめ
この記事では「製造者」と「製造所」の違いについて解説しました。
「製造所」のように「✕✕所」と記載されている会社は、食品の製造を行った場所になります。
原則として、ラベル表示責任者と食品の製造場所の両方を表示する必要がありますが、同一の場合、ラベル表示責任者のみの表示で問題ないというルールもあります。
以上、この記事がみなさんが食品を選択する際の参考になれば幸いです。
• 食品表示基準Q&A 平成27年3月|消費者庁
• 早わかり食品表示ガイド 令和5年3月版|消費者庁
• 食品衛生の窓 一般用加工食品 (食品関連事業者及び製造所等)|東京都福祉保健局
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